2003年11月

この際だ、はっきり書いておこう。
私は・・ただの釣り好きで、少々文学かぶれのお調子者でもある。
ただし、良い物は良い物として認識するくらいの見識は持ち合わせているつもりでもある。
しかも、おのれの文学的才能、裁量や、釣りの技術についてもアマチュアの域を脱していない事も重々承知しているつもりだ。
あえてその上に立っての感想であることを前もって表記しておきたい。

次第はこうである。

釣友のTVパーソナリティ「ボンバー石井君」がある日
「タレックスは好いよ、知ってる？加来さん！」
と言ったのが事の始まりで、グラシーズ白島さんのHPに紀行文を書く羽目になってしまったが、これは何より私がタレックスの偏光レンズに心底惚れてしまったからに他ならない。
この件に関しては前節にて書いているつもりだが、またまたグラシーズ白島のスタッフ「三宅君」から「次作をお願いします」と言うオファーを受け、優秀な偏光レンズのお世話になっている私としては一も二も無くお引き受けしてしまった。

責任（表現）は重大である。
私が半ば大げさにも感じている「釣りに優秀な偏光レンズは欠かせない」
と言う事実をどう表現すればよいのか？どうすればその性能を如実に伝えることができるのか？全く持って大きな課題となってしまった。

しかしここは己が感じるままに、カメラが捉えるままに、ありのままにお伝えする事が最良だと判断し、この季節ならではの「アオリイカのエギング」でお届けすることにした。


レオン釣り紀行２
2003
October 23th
「大黒神島ボートエギング」

10月23日早朝七時、少しくたびれてきた愛艇「ヤマハSRV20・ウェイクボードV・70馬力」に火を入れ港を離れた。
メンバーはボンバー石井と私、それに女性アングラー大森さんの三人である。
目的地まで45分ほどのクルージングだが、おあつらえ向きの凪で、ボートはまるで内水面の湖面を走るがごとく快適な出だしだった。

島に到着し、大場所は後回しにして一昨年の小物数釣り場から始めることにした。
何せエギング初心者の女性同伴の釣りである。
何とか釣らせてあげたい。
そして何より偏光グラス越しに見える「イカがエギを追う様」を撮りたかった。
まずはシャローからミドルレンジに残っているはずの新子をチエックする。
昨年ボンバーと訪れた折にファーストキャストで10〜20杯ものアオリがチェイスしてきた場所だ。

岸際に密生するウイードエリアにエギをキャストし、水面直下を５、６回左右に大きくダートさせて反応を見る。
出てこない。再度打ち返す。ボンバーも左手をチエックしエギを注視する。いない…。
２〜３箇所場所を変えながらチエックするがどうやらシャローにはいないようだ。

次に潮通しの良い場所を選んでミドルレンジを撃ってみる。
ボトムから２段シャクリや大き目のジャークをかませながらエギが見える水深まで持ってくるが、やはりイカは付いてこない。
魚探の水温計に目をやるとナント１８度しかない。
これではサイトの釣りはだめだ。残念だが「エギを追うアオリ」の撮影はままならない。時期が遅すぎた。イカは深みに下がっているようだ。

「可愛い秋アオリ」

水中撮影を早々に切り上げ本格的に実釣を開始する事にした。
どうやら水深１０ｍ以上のディープにいるような気配がある。
本命のＡ級ポイントへ場所を移し、開始する。

魚探でストラクチャーの位置を確認しエギをボトムまで落とし込む。
２度３度とシャクリを入れると一投目から乗ってきた。やはり見えない深さで抱いてくる。しかし小さい、胴寸１３ｃｍほどの新子だ。本来はリリースするところだが、今日は大森さん家のお土産として確保する事にした。
次々と当たりがあり、立て続けに乗ってくる。ボンバーが十分なキープサイズを上げる。また、上げる。

二人でひとしきり釣ったところで、いまだ釣れない大森さんに石井君が熱心に教え始める。
言葉は結構きついのだが愛情あふれる（男女間のものではない。念のため）指導で、大森さん発奮し、メキメキと上達を見せ、シャクリの手つきが変わってき始めた。

と！
「うわい！抱いたよ〜」

と大森さんの弾む声。
私が女性用に用意したミディアムクラスのバスロッドが軽く弧を描いている。
水面近くで十分に墨を吐かすように、との声が石井君から飛ぶ。
無事に可愛いアオリをキャッチし満面の笑みの大森さん。
役目を果たし我が事のように喜ぶ石井君。咥えタバコに「男」の臭いを漂わせながら
「やるじゃん、もう大丈夫！後は自分でやりな！」
と言い放ちながらその後も教える石井君。快男児ここにあり！の風情であった。

その後、時合いに突入し良型を連発！
胴寸２０ｃｍ近いアオリで生簀がどんどん黒くなった。
タイムアップ間際に私に最良の形でヒットがあった。
ハイピッチでジャークさせている最中にガツンとまるで魚のようにあたって来た奴がこの日の私の最大寸となった。
竿頭は、トップフリークルアーマン、流れ川のブルーズマン、イカしたＴＶパーソナリティ、ギターもロッドもマイクも扱いの上手い「石井君」であったことを付け加えておこう…。

ちなみに大森さんは偏光レンズで海の中を覗いたのは今回が初めてで、群れ遊ぶお魚さんを見て子供のようにはしゃいでいた。水中ウオッチングの楽しさを満喫したようだった。

November 2nd

先週に引き続き２度目の取材になった。
今回は二人の凄腕アングラーを伴っての出発だ。
華麗なフォームと正確性を伴うキャスティングの名手「カンサイ君」
己自身に妥協を許さぬ釣りへの真摯なこだわりと、人呼んで「ゴッドハンド」の異名を持つ「マッキー」こと「松木君」
この二人とはココ２年の付き合いだが、同行するといつも水準以上の緊張感を持って接せねばなら無い相手であり、それが私の無上の楽しみとなっている。
今回もどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか？期待で胸一杯の釣行となった。

「男と道具」

ここで少し松木君とタレックスについて触れておこう。
彼は私などよりはるかに早くタレックスに魅せられた一人である
ズイールのフレームに「トゥルービュースポーツ・ブルーミラー」が彼の愛品であるが、男っぽい風貌に見事にマッチして、私が見ても惚れ惚れする「コアアングラー」の雰囲気を醸し出し「男の趣味の道具」には機能だけではなく「色気」が如何に大事かを感じさせてくれる「仕上がり」になっている

こういったことは付け焼刃では到底成しえぬ事で「ナンチャッテ男」ではどんなに良いものを持っていても、それは単なる「お飾り」で、内面からにじみ出る風格は克己や鍛錬によって一つの事を貫き通した「漢」でなければ出せないものなのである。
彼がソレを釣りで築き上げたのか、はたまた若き日の「ヤンチャ」で築き上げたのかはわからないが、少なくとも世界に冠たる「男の道具」たちはナイフであれ、車であれ、ライターであれ、人物の、その道の、達人にしか似合わないようにできているものであろうかと私は思う。

サングラスやレンズも当然その意味において外れるものではなく、私は「ＴＡＬＥＸ」も比類の無い「本物」であると認識しているし、道具と言うものは道具のもてるポテンシャルを「本来的に使いこなせる持ち手」に対してだけ切れ味が鋭くなるものだと思う。色気も出てはこない。

「正宗もヘタが使えばナマクラ」である。
私などはまだまだタレックスが似合っていない（笑）
「道具に人物が浸透する」のである。「道具が人物を育てる」こともある…。

「大黒神島へ」

まずは「罠」を仕掛けてみる事にした。
いやいやイカにではない。二人のコアアングラーに対してである。
この辺私は面白がりの意地悪でもある。

ポイントは岸近くの桟橋に連結してある筏だ。
周りはイカ釣りにはそこそこのロケーションである。
志あるアングラーならキャストするポイントは一目瞭然でさえある。
だがココには落とし穴的穴場があるのだ。

そしてめいめいキャストをはじめる。
だが釣れない。当然だ。ココのイカはナント足元の筏の中に入り込んでいるのだ。

少し二人の気を「そらせた」後、私は二人と違ってキャストはせずに筏の真ん中、竹と竹の間にエギをそっと落とし込む。

かなり深いので底は見えず、沈降していくエギもすぐに紺碧の底へと吸い込まれ見えなくなる。
するすると出て行くラインがふっと止まり、エギの着底を知らせてくれる。
底から連続的なジャークで偏光グラス越しにエギを見える位置まで跳ね上げてじっと注視してみると、来た来た！どこからとも無く現れたアオリイカがエギをじっと見ている。
エギをフリーに落としてみる。抱かない。もう一度跳ね上げて見せ、今度はちょんちょんと小さいアクションを加える。
今度は決まった！スーッと近寄ったイカがエギを横抱きにして斜め下へと持っていく。
カンナ針の方向を見定めてフッキング！よし乗った！偏光グラスのおかげで一部始終丸見えだ。だからハズシは無い。ベストのタイミングで合わせられるのだからこの上ない。サイトフィッシングの妙でもある

「来たよ」とぶら下げてみせる。今年の悪い状況下では十分のキーパーだった。

松木君「なんとセコイ釣りをしてるな加来さんは」と言う顔をし、やはり自分の思う方角へキャストする。だが釣れない。ウシシシ、と内心笑いながら２杯目をゲット！カンサイ君すかさず「シンクロ」し、すぐに２杯ゲット。柔軟である（笑）
二人して３杯目を釣るとさすがに松木君も「自分の釣り」をやめてシンクロする。

だが釣れない。釣れない。釣れない！。
セコ釣りに向いていないのか？（笑）
「どうせ後でやられる」と確信している私はかような卑劣な手段に出たのだがこれくらいにしておいて、本来の釣りができる場所へ向かった。
とりあえず出鼻はくじいたぞ！（爆）


「本命馬追い込み」

途中、時合いを図りながら要所要所に立ち寄り、徐々に本命ポイントへ向かった。
三人ともそこそこの釣果だ。
やはり時合いは夕まず目に来た！Ａ級ポイントのそばの小場所だった。
１５ｍ〜２０ｍの水深から一気に５ｍまで水中岩が立ち上がっている場所で、岩のエッジを通したときにグンッと乗ってくる。

　

ここから松木君の追い上げが始まり、とうとう「やはり」のホンイチ（本日一番）をゲットされてしまった。
のみならず数量も逆転され、私個人的にはまたまた課題を残す結果となった。
まあ「予測された」と言うより「妥当な線」ではあるのだが（笑）

「ビッグラッシュ！」

ばたばたとラッシュが続き十分のお土産が確保でき、少し休憩気味に流していると、なにやら遠くの水面が騒がしい。

「加来さんナブラ、ナブラ！」とカンサイ君の雄叫び。
船を回しナブラに近づく、まるで大雨が降っているように海面が騒ぎ「はじけて」いる。
ルアーマンにとっては興奮の極致、千載一遇のチャンス到来である。
めったには遭遇できない。

カンサイ君すかさずなにやらプラグを結び投げる。
着水、ヒット！、リールを巻く間もない。いわゆるポチャパクだ！。
小気味良くロッドが曲がり躍動を伝える。走る。さらに曲がる。

「おお〜、引く引く、あっははは〜」

鯖だった。あたり一面500坪程の海面を鯖が埋め尽くしていた。ボートの周り中魚だらけだ！
ココからは狂気乱舞、投げる、掛ける、寄せる、生簀に放り込む。
さらに投げる、さらに掛ける。

松木君ドラエモンのごとく次から次に色々なルアーをポッケ（ＢＯＸ）から出し、ことごとく掛ける。

「がははは！何投げても食うぞコイツら♪」

カンサイ君負けじと切れの良い身ごなしでハイピッチに次々と水揚げをする。
「うっひゃ〜♪むちゃ楽しいぞ〜♪」

全く見事だった。まるで「熟練工の流れ作業」のような手際の二人だった。
「あせらず」「さわがず」「もたつかず」「むだなく」「こきみよく」
すべての形容詞を超えて釣りまくり、暮れ始めた空に向かって咆哮する「漢たち」の雄叫びや、底の抜けた高笑いは、海面を滑ってこだますることなく瀬戸内の海を渡っていった。